常温でもOK?カレーの保存4つのポイントで食中毒や味の劣化を回避しよう!

【管理栄養士が監修】カレーライスは、「一晩寝かせると美味しくなる」といわれます。ですが、菌が増えるのは怖いし、冷蔵庫でも何日もつか不安になるのではないでしょうか。特に、気温と湿度が上がる春から夏にかけては注意が必要です。今回は実際のところ冷蔵保存できる期間と、おすすめの保存方法をご紹介します。

目次

「一晩ねかせたカレー」は美味しい?危ない?

みなさんは「一晩寝かせたカレーは美味しい」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?なぜ作りたてのカレーよりも美味しく感じられるのでしょう? これについて、カレールーやレトルトカレーで有名な江崎グリコ株式会社のHP(※1)では、

  • 具材のもつ旨み成分や甘み成分がソースに溶けだしてコクが増す。肉・野菜・香辛料に含まれる糖質やタンパク質、アミノ酸などの成分が微妙に絡みあうことで、独特の「コク」が生まれる
  • ブイヨンも一晩ねかせることで「冷ます」と「温める」が繰り返されるので、素材の旨み成分がよく混ざりあい、熟成が進む
  • カレーのスパイスは、じっくり余熱で加熱されることで、突出したとげとげしさが減少し、全体のバランスがとれた、熟成された奥深い香りと風味になる

といった理由を挙げています。つまり、カレーのルーに具材の美味しさが溶け出し、旨み成分やスパイスの熟成が進むことでさらに美味しく感じられるということなのですね。ただし、実はカレーは食中毒を引き起こす可能性が高い料理でもあります。安全性を考えると寝かせすぎるのもよくないかもしれませんね。

※1・・・江崎グリコ株式会社HP カレーの科学3 「一晩ねかせたカレー」はなぜおいしい?

常温で寝かせすぎたカレーは菌だらけ

菌のイメージ

カレーは、寝かせることで細菌が増殖してしまう可能性が高いといわれています。特に懸念されているのが、ウェルシュ菌という細菌。ウェルシュ菌は健康なヒトの腸管や土壌、下水等の自然界に広く生息していますが、これが腸の中で毒素を生み出し、食中毒を引き起こすことがわかっています。

粘り気が強いカレーは、このウェルシュ菌が増えやすい環境といわれている上に、作り置きして常温保存することも、菌の増殖しやすい環境にぴったりと当てはまってしまいます。

ウェルシュ菌は熱をとおしても無駄?

ウェルシュ菌自体は本来熱に弱いのですが、厄介なのは芽胞(がほう)という丈夫な構造を作ることで、高温の中でも生き残ってしまうことです。芽胞はとても熱に強い性質があり、100℃の高温にも耐えることができます。ですから食べる前に再加熱したからといって、完全に菌を殺すことは難しいといわれています。菌をなるべく増やさないことが重要になるのですね。

どのくらい放置すると危険?

ウェルシュ菌は、1 g当たり10万個以上含まれる食品を食べることで食中毒が発生するといわれています。実験(※2)では、4人分のカレーを調理後1時間室温で放置し、カレーの中心温度が45℃に達した後ウェルシュ菌1g(約1,000個の菌を含む)を投与しました。その後30℃で保存したものでは、6時間後にカレー中のウェルシュ菌が1gあたり10万個を超え、24時間後には何と1,000万個にまで増えてしまうことがわかりました。

こうしたことから、特に夏場であればたとえ半日でも常温での保存は避けたほうが望ましいことがわかります。なお、30℃で3時間置いた後4℃で保存したものについては急激な菌の増殖は見られなかったため、食事前に数時間程度の常温保存であれば心配しすぎる必要はないといえそうです。

※2・・・株式会社食環境衛生研究所よる「ウェルシュ菌のリスク評価実験」

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保存するときに押さえておきたい4つのポイント

先ほどと同じ実験(※2)で、ウェルシュ菌を投与後4℃で保存したものでは24時間後まで菌の数は1gあたり1万個以下に留まりました。

このことから、1日程度であれば冷蔵庫でカレーを保存することができると考えられます。ただし、大きな鍋で大量に作って鍋ごと冷蔵すると、カレーが冷えるまで時間がかかるため、菌が増殖して食中毒につながった事例(※3)もあるようです。家庭でも鍋ごと冷蔵庫に入れて冷やすことは避けたいところですね。

また、ウェルシュ菌は嫌気性細菌といって酸素がないところを好む細菌です。小分けにして表面積を増やしたり、冷ましている最中、温めている間もかき混ぜるようにすればより食中毒予防に有効です。このことから保存する時は次のことを押さえておくと良いでしょう。

  • 鍋ごと保存せず小分けにする
  • 粗熱をとるのは2〜3時間以内
  • 常温保存はしない。しても半日以内に食べる
  • 冷蔵保存は1日程度であれば大丈夫

また、ウェルシュ菌の場合は増殖しても見た目や味に変化はありません。匂いや味などの感覚ではなく保存時間や保存の方法をみて安全かどうか判断するようにしましょう。

※3・・・食品衛生学雑誌1999年40巻2号p.J227 小山田正「仕出しカレーライスによるウェルシュ菌直中毒」

細菌の増殖を遅らせる保存方法

ジップロックは冷やしやすい点がメリット、温める際は注意が必要

菌の増殖を防ぐためには、急速に冷やして保存することが重要です。その意味でおすすめなのは、ジップロックなどの食品保存用袋です。こうした袋に入れると、厚みを抑えた形で冷やすことができるので、素早く温度を下げて菌の増殖を防止することが期待できます。

ただし、こういった食品用保存袋は耐熱温度が約100℃となっているものの、加熱を想定して作られてはいないため、袋が熱しすぎたカレーの油によって溶けてしまうことがあります。実際、編集部員がジップロックに入れて冷凍保存したカレーをレンジで温めようとしたところ、袋が溶けて破れてしまいました。

温める際はそのまま湯煎やレンジにかけることは避け、鍋などの別容器に移すようにしましょう。

牛乳パックは便利だが、使う前によく洗って

牛乳パックでカレーを冷凍保存するという方法も巷には出回っています。しかし牛乳パックでカレーを保存すると、使い捨てにできるので便利ではありますが、もともと牛乳が入っていた容器なので、開封後にパック自体に菌が付着し増殖している可能性は否定できません。

カレーの保存に使用する場合は食器用洗剤などでよく洗い、一度完全に乾かしてから使いましょう。また、牛乳パックは高温になると素材に使われているポリエチレンが柔らかくなり、100℃を超えると溶けはじめます。温める際は必ず別の容器に移すようにしましょう。

ラップだと好きな量に小分けできる

食品用ラップでカレーを包んで保存すれば、一度に食べたい量だけ保存することができます。注意点としては、チャック付きポリ袋などと同様にそのまま加熱すると溶ける可能性があることです。タッパーなどの保存容器と組み合わせることで使いやすくなります。保存容器については次の項目でご紹介します。

プラスチックやゴム素材は要注意!

カレーは油分が多く、またスパイスなどの濃い色素を含むため、プラスチックの容器だと色や匂いがすぐ移ってしまいますよね。タッパー容器などにカレーを保存する場合は内側にラップを敷き、カレーを包むようにすることで、容器に落ちにくい汚れや匂いが付くのを防ぐことができます。

また、器部分がガラスでできた保存容器は汚れが残りにくいのでおすすめです。ガラス容器もフタの部分にはゴムパッキンなどが付いていることが多いので、気になる場合はラップをかけた上からフタを閉めると良いでしょう。

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長期保存なら冷凍がおすすめ

基本的にはカレーは作った当日か、冷蔵保存でも翌日には食べ切るのが理想的ですが、どうしてもそれ以上保存したい場合は冷凍保存がおすすめです。冷凍する場合も、チャック付きポリ袋などで平らにして冷凍するか、金属のバットにラップを敷いたものを使うなどして、速やかに温度を下げるよう工夫すると良いでしょう。

ルーと根菜類は分ける

ジャガイモやニンジンなどの根菜類は、冷凍により水分が抜けることで「す」がはいったような状態になり食感が悪くなってしまいます。冷凍する際はそれらの具は取り除くか、つぶしてペースト状にしてから冷凍するのがおすすめです。

解凍して美味しく食べるには?

冷凍したカレーを解凍する際は、必ず鍋に移してしっかりと加熱してください。加熱により解凍後の菌の増殖を抑え、芽胞を形成していない菌を殺菌することができるので、食中毒を引き起こす可能性を減らすことができます。自然解凍は菌の増殖に適した温度が長く続いてしまう可能性があるので避けましょう。また、電子レンジでの加熱も加熱ムラや殺菌できる温度にまで達しない可能性があるので、やはり避けたほうが良いでしょう。

誰もが好きな家庭料理の定番であるカレーは、主婦にとっては作りやすく便利なメニューの一つです。最近はフレーク状や、少人数向けに小分けされたカレールーも販売されていますので、食中毒を防ぐためになるべく家族に合った量を作って長期保存を避け、なるべく作った翌日には食べ切りたいものです。正しい調理法や保存法で、安心してカレーを楽しみましょう!

監修: 管理栄養士 尾花友理

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