【薬剤師が解説】貧血を予防・改善する食べ物とは?

貧血に悩まされている女性は多いもの。「貧血には鉄を豊富に含むレバーやほうれん草を食べるといい」というイメージのある方は多いと思いますが、貧血を予防・改善する食べ物は他にどんなものがあるのでしょうか?

薬剤師の観点から、コンビニで手軽に買える貧血対策になる食べ物や、避けるべき食べ物、おすすめレシピや鉄剤・サプリなどをあわせてご紹介します。

目次

貧血とは

そもそも一口に貧血といっても、いくつかの種類があり、原因、症状も異なります。貧血の種類によっては食べ物で自己改善をはかるのではなく、すぐに医師に相談したほうがいい場合もあります。

貧血の種類

貧血は次の4種類にわけることができます。

  1. 鉄欠乏性貧血(出血過多による鉄損失、鉄摂取量の不足、鉄の需要増加、胃切除などによる吸収障害)
  2. 巨赤芽球貧血(ビタミンB12、葉酸の不足)
  3. 再生不良性貧血(白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する病気)
  4. 溶血性貧血(赤血球が壊れる病気)

貧血の中でもっとも多くの人に見られるのが「鉄欠乏性貧血」で、この場合は食べ物での改善を図ることができます。特に女性の場合、月経・出産の出血によって鉄不足になりやすく、妊娠中は鉄の必要量が通常よりも増えるため、鉄欠乏性貧血になりやすいと言えます。ただし、鉄不足の原因が胃切除などによる吸収障害の場合は、食べ物で対処することはできません。

また、鉄欠乏性貧血よりは稀ですが、鉄以外にも、ビタミンB12や葉酸が不足すると「巨赤芽球性貧血」と呼ばれる貧血を引き起こすこともあります。偏食等が原因の場合は食べ物での改善を図ることもできますが、こちらも胃切除などを行っている場合は、内服薬や注射による補充療法を行います。

一方、骨髄にある造血幹細胞が減少することにより、白血球、赤血球、血小板など血液細胞全てが減少する「再生不良性貧血」や、赤血球の膜が壊れることによって起きる「溶血性貧血」は、専門的な治療が必要になる病気です。

次に紹介する鉄欠乏性貧血の症状に加え、身体にアザができやすい、鼻血や歯肉出血が出やすいなどの症状(再生不良性貧血に見られる症状)、黄疸・胆石・褐色尿などの症状(溶血性貧血に見られる症状)がある場合は、血液内科の医師の診察を受けるか、かかりつけの医師に相談してください。

参照:東京都病院経営本部ホームページ「貧血の食事」,慶応義塾大学医学部血液内科「溶血性貧血」,「再生不良性貧血」

鉄欠乏性貧血の症状

もっとも多くの人に起こりやすい鉄欠乏性貧血の症状としては、以下のものが挙げられます。

  • 体を動かしたときの息切れや動悸
  • 頭痛
  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 疲れやすくなる
  • 爪が割れやすくなる
  • 無性に氷を食べたくなる
  • 髪が抜ける
  • 肌が荒れる

また、上記のほかにも鉄欠乏性貧血が原因でイライラや倦怠感が生じる場合もあります。

食事やサプリメントで生活改善しても症状が続くときや、症状が重く日常生活に支障をきたすようなときは、迷わず医師の診察を受けましょう。

一日に必要な鉄の量

鉄は、女性が不足しやすい栄養素の一つです。一日に必要な鉄の推奨量は、成人女性(月経あり)では10.5〜11.0mg、成人男性では7.5mgです。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

鉄が比較的多く含まれているイメージのある食品100gあたりの鉄量と、成人女性に必要な1日あたりの鉄量(11mg)を摂取する上で必要な量を、以下の表にまとめました。

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

こうやって一覧にしてみると、レバーの鉄含有量は非常に多いことがわかります。また、鉄の多い野菜というとほうれん草を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は小松菜の方が含有量は多いのです。

一種類の食べ物で必要量を摂取するのはなかなか難しいので、様々な食品からまんべんなく鉄を摂取するか、食事だけで補うのが難しい場合はサプリメントに頼るのも方法の一つです。

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鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類がある

食品に含まれる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。

へム鉄は肉や赤身の魚、非へム鉄は牛乳や卵、野菜などに含まれていますが、体への吸収率が高いのはへム鉄で、吸収される割合は約25~30%と言われています。これに対し、非へム鉄は約5~10%程度しか吸収されません。

鉄不足の予防には、吸収の良いヘム鉄が多く含まれる食品を摂るのがおすすめです。また、非へム鉄を含む食品であっても、ビタミンCを含む食品と一緒に食べることで、鉄の吸収率を高めることができます。

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貧血対策のための食事のポイント

貧血対策の食事というと鉄ばかりに注目してしまいがちですが、ヘモグロビンなどの材料になるたんぱく質、鉄の吸収を高めるビタミンCを含む食品も積極的に摂りましょう。赤血球が作られるときには葉酸やビタミンB12なども必要になります。

また、鉄の吸収を良くするには、胃酸が十分に分泌されることが重要です。良く噛んでゆっくり食べることで胃酸の分泌が促されるので、食事の内容だけでなく、食べ方にも気をつけましょう。

調理器具を工夫するのも手

鉄不足の解消法として、調理器具を工夫する方法もあります。鉄のやかんや鍋、フライパンなどで調理をすると、鉄が少しずつ溶け出すので自然と鉄補給ができます。

ただし、鉄鍋でも表面にテフロン加工などのコーティングがされている使いやすいものは効果がありません。また、鉄の調理器具は重く、お手入れも必要なので躊躇する人も多いと思います。

そんなときは南部鉄器を卵型に成型した「鉄玉子」がおすすめです。やかんや鍋に一緒に入れて調理するだけで、手軽に鉄補給ができますよ。

貧血を予防・改善する食べ物とおすすめレシピ

続いて、貧血を予防・改善する食べ物や、その食べ物を使ったおすすめの貧血対策料理を解説します。

肉類(レバー、赤身肉など)

肉類で鉄が多く含まれるのは鶏レバーや豚レバー、豚ヒレ肉、牛サーロインなどです。「色が赤い肉類=鉄が豊富」と覚えておきましょう。

レバーは体に吸収されやすいヘム鉄が豊富なだけでなく、血液を作る際に必要なビタミンB12と葉酸も含んでいる優秀食材です。独特の臭みが苦手という人も、ソース煮や生姜煮など、味付けを工夫してチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

【レバーを使った簡単レシピ】

レバーとピーマンのにんにくしょうゆ炒め

鶏レバー、ピーマン、○しょうゆ、○酒、○にんにくチューブ、●しょうゆ、●酒、●みりん、●にんにくチューブ、片栗粉、ごま油

調理時間:15分

豚ヒレ肉や牛サーロインなどの赤身肉もヘム鉄が豊富な食材です。火を通しすぎると固くなり食べにくくなってしまう食材なので、ヒレカツやステーキなどは火加減に注意して調理しましょう。

【豚ヒレ肉を使った簡単レシピ

豚肉とトマトの和風マリネ

豚ヒレ肉(塊肉)、トマト、塩・こしょう、薄力粉、○めんつゆ(3倍濃縮)、○すし酢、サラダ油

調理時間:15分


魚介類(あさり、しじみ、いわし、赤身魚など)

魚介類で鉄が多く含まれるのはあさりやしじみをはじめ、マグロ、カツオなどの赤身魚、イワシなどです。

あさりには特に鉄が多く含まれています。あさりといえば味噌汁が定番ですが、豆乳クリームパスタや、豆乳スープなどのレシピもおすすめです。牛乳よりも鉄が豊富な豆乳を使うと、効率的に鉄が摂れるだけでなく、脂肪分やカロリーも抑えられヘルシーな一品になりますよ。

【あさりを使った簡単レシピ】

あさりの豆乳味噌汁

あさり(砂抜き済み)、無調整豆乳、小ねぎ(あれば)、味噌

調理時間:10分

また、マグロやカツオなどの赤身魚にも、体に吸収されやすいヘム鉄が豊富に含まれています。お刺身などで手軽に取り入れたり、保存のきくツナ缶を活用するのもおすすめです。

また、あさりやしじみ、いわしなどはビタミンB12も豊富に含んでいるので、鉄を豊富に含む食材と合わせて食べると貧血改善効果がアップします。

野菜・海藻類(小松菜、ほうれん草、水菜、春菊、海苔、ひじきなど)

野菜・海藻類で鉄が多く含まれるのは小松菜やほうれん草、水菜、春菊、海苔、ひじきなどです。

鉄が豊富な小松菜やほうれん草には、鉄の吸収を助けるビタミンCや、血液を作る際に必要な葉酸が含まれています。また、海苔も鉄が豊富なので、汁ものや和えものなどにさっと混ぜるだけで、鉄補給に役立ちます。2つの食材を組み合わせて、海苔和えにするのもおすすめです。

野菜に含まれる鉄は体に吸収されにくい非ヘム鉄なので、吸収されやすいヘム鉄と一緒に調理すると、吸収率をアップさせられます。水菜や春菊は、ツナと和えてサラダにしてみてはいかがでしょうか?

【水菜を使った簡単レシピ】

水菜と大根の旨ツナサラダ

水菜、大根、ツナ、○すりおろしにんにく、○ポン酢、○ごま油、○すりごま

調理時間:10分

豆類(大豆、納豆、厚揚げなど)

豆類で鉄が多く含まれるのは大豆のほか、大豆の加工品である納豆、厚揚げなどです。

鉄の吸収を助けるビタミンCが豊富な小松菜やほうれん草などの青菜は、効率よく鉄が補給できる相性の良い組み合わせです。厚揚げと一緒にさっと煮物にすれば、ボリューム満点の副菜が完成します。

【厚揚げを使った簡単レシピ】

厚揚げと小松菜のボリューム煮浸し

小松菜、厚揚げ、○しょうゆ、○酒、○みりん、○和風だしの素(顆粒)、○塩

調理時間:15分

コンビニで買える貧血対策におすすめの食べ物

コンビニで手軽に買える商品でも、貧血対策は可能です。

  • 味付きゆで卵、半熟卵(鉄のほか、ビタミンとミネラルも豊富)
  • 炙りしめ鯖、鯖の塩焼き(ヘム鉄とビタミンB12が豊富)
  • ひじき煮、ひじきのおにぎり(非ヘム鉄が豊富)

ひじき煮に含まれるのは非ヘム鉄なので、鉄の吸収を促すビタミンCを含む商品、たとえばカットフルーツや果物ジュースと一緒に買うとよいでしょう。

また、おやつで鉄補給をするなら、以下がおすすめです。

  • ドライブルーベリー
  • チョコレート
  • ココア

チョコレートは、高カカオのものの方が鉄を多く含み、ホワイトチョコレートには鉄は含まれません。ただし、チョコレートは鉄の吸収を妨げるタンニンも微量に含んでいるので、食べすぎには注意しましょう。

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貧血の予防・改善で避けたほうがいい食べ物

以下の食べ物や飲み物は、一緒に食べることで鉄の吸収を妨げてしまうので注意が必要です。

  • インスタント食品
  • スナック菓子
  • 清涼飲料水
  • 緑茶
  • 紅茶
  • ウーロン茶
  • コーヒー

インスタント食品やスナック菓子、清涼飲料水などの加工食品に含まれるリン酸は、鉄の吸収を妨げます。また、緑茶や紅茶、ウーロン茶、コーヒーなどに含まれるタンニンも鉄の吸収を妨げるので、食事中に濃いお茶やコーヒーを飲むのは避けましょう。

薬剤師おすすめの鉄剤・サプリ

鉄分はできるだけ食事から摂ることが望ましいですが、それでも補いきれないと感じたなら、市販の鉄剤やサプリを利用してみてもいいでしょう。おすすめの鉄剤とサプリを紹介します。

おすすめの鉄剤:小林製薬 ファイチ【第2類医薬品】

対象年齢・用量:大人(15才以上) 2 錠/1日1回、8才以上15才未満 1 錠/1日1回

吸収されにくい非ヘム鉄の中でも、吸収率の高い溶性ピロリン酸第二鉄が配合されています。鉄のニオイや味が気になりにくいコーティング錠剤で、効果だけでなく飲みやすさの観点からもおすすめできます。

おすすめの鉄剤:サトウ製薬 エミネトン【第2類医薬品】

対象年齢・用量:大人(15才以上) 2~3 錠/1日2回、7才以上15才未満 1 錠/1日2回

鉄剤の副作用として起こる胃のむかつきや荒れを抑える成分が配合されています。服用量を調節することで7才から服用できるため、家族の常備薬にぴったりです。

おすすめのサプリ:DHC ヘム鉄

1日摂取目安量:2粒

吸収の良いヘム鉄が、1日の目安量2粒につき10.0mg摂取できます。国内メーカーのヘム鉄サプリの中では高用量タイプに分類されるため、病院で処方された非ヘム鉄の鉄剤で吐き気や便秘などの副作用が気になった方にもおすすめです。

おすすめのサプリ:UHAグミサプリ 鉄&葉酸

1日摂取目安量:2粒

鉄分は、継続して摂り続けることが何より大切です。水なしで食べられるグミタイプのサプリメントなら、普段サプリメントを摂る習慣のない方でも続けられるかもしれません。

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貧血予防は毎日の積み重ね

日々の生活を送る中で鉄は体から失われていくので、毎日の食事でしっかり摂取する必要があります。貧血対策レシピを1回作って終わり...ではなく、スーパーでの買い物は鉄が豊富な食材を多めに買うなど、鉄補給の習慣づくりが大切です。

食事やサプリメントで生活改善しても貧血症状が続くときや、症状が重く日常生活に支障をきたすようなときは、迷わず医師の診察を受けましょう。

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