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レアチャーシューなど生肉は食中毒リスクあり!生食の危険性や起こりうる症状と対策【薬剤師が解説】
最近「低温調理」など生肉・生食が流行っています。一方で、飲食店で提供された生肉料理を口にしたお客さんたちが集団食中毒を起こすなど、きちんとした知識がない状態で生食をしてしまい健康被害が出てしまうケースも少なくありません。
生食にはどのような危険があるのでしょうか。また、どのような肉の種類や調理であれば生食を安全に楽しむことができるのでしょうか。
生肉を安心して摂っていただくため「生肉の危険性と生肉摂取で起こりうる症状」について、現役薬剤師が解説します。
【生肉の危険性】生食による食中毒や寄生虫のリスクあり
食中毒にはあらゆる種類がありますが、生肉に付着しているウイルスや細菌は攻撃力が強く、食中毒の中でも特に気をつけなければなりません。
生肉による食中毒は一年中起こっていますが、夏は冷房や冷蔵・冷凍設備の管理が行き届いていないと、外気の暑さでウイルス・細菌の繁殖が増し、食中毒が起こりやすくなります。
食中毒を防ぎ安全に食べられるよう、危険性と回避方法をお伝えします。
生肉にいる細菌や寄生虫など
生肉の食中毒を引き起こす原因は沢山ありますが、中でも腸管出血性大腸菌(O157、O111など)や、カンピロバクターによる食中毒の報告が後を絶ちません。
またサナダムシの一種などの寄生虫がついていることがあります。
十分に加熱処理ができていないと、これもまた食中毒を起こす原因になります。
肉の種類によっても存在している細菌や寄生虫は異なりますので気をつけましょう。
生肉の摂取で起こりうる食中毒の症状
肉の種類や個人差がありますが、主に嘔吐、下痢、腹痛、発熱、頭痛などが挙げられます。
また稀にそれに伴う合併症も誘発されます。
寄生虫による食中毒でも、同様の症状が表れます。
生肉摂取の回避方法は?
生肉摂取を避けるには、例え外食店での食事であっても、なるべくご自身で安全性を確認することが重要です。
流行りのレアチャーシューや低温調理された食品が本当に安全か、お店の責任者(食品衛生責任者などの資格保有者等)はしっかりしているか、ということを気にするようにしましょう。
外食店で提供されているから100%安全という保証はありません。
生食できる・できない食材の違いと種類【生肉の食中毒を避ける】
生食できる食材とできない食材の違いはあるのでしょうか。
・牛肉
・豚肉
・鶏肉
・馬肉
・ジビエ
上記の食材別で、それぞれ詳しく解説していきます。
牛肉の生食とその危険性
新鮮か否かは関係なく、牛の肝臓(レバー)などの内臓系の生食の提供は法律で禁止されています。
これらは必ず加熱しなければなりません。
ユッケやたたきなど、生食用の牛肉は条件を満たしていれば提供できます。
かつて牛肉の肝臓(レバー)は生で食べられましたが、2011年に起こった焼肉店での集団感染事件を背景に、2012年から法律が変わり提供禁止になりました。
牛肉の内臓は大腸菌が多く存在し、しっかりと火を通し殺菌・静菌してから食べるよう推奨されています。
牛肉の内臓に存在する大腸菌は腸管出血性大腸菌とも言われており、この菌が体中に入り「腸管出血性大腸菌感染症」という病気を発症します。
腸管出血性大腸菌は感染力が非常に強く、食品に少量しか付いていなくても感染します。
感染力だけでなく毒性も強く、子どもや高齢者では「溶血性尿毒症症候群(HUS)※」を誘発し、腎臓や脳の後遺症になるケースも珍しくありません。
また、最悪の場合、死に至ります。
潜伏期間は長く2~9日程で、その間に家庭での二次感染を誘発したり、症状の原因がすぐに分からず迅速な治療ができなかったりする可能性があります。
症状は、初期は下痢や腹痛、次に激しい腹痛や血便がみられます。
腸管出血性大腸菌は75℃、1分間以上の加熱で死滅しますので、しっかり加熱してから食べましょう。また生肉が手に付着した際は十分に洗剤で洗いましょう。
(※溶血性尿毒症症候群(HUS):急性の劇症疾患で、主に感染後の小児や高齢者が発病します。大腸菌などが産生するベロ毒素が原因となり、血便を伴う下痢、嘔吐、腹痛、発熱という症状に続き、血小板減少症、微小血管障害性溶血性貧血、急性腎障害などが誘発されます)
(参考①:日本腎臓学会 / 溶血性尿毒症症候群(HUS)の診断・治療ガイドライン)
(参考②:厚生労働省HP)
豚肉の生食とその危険性
豚肉の生食提供も、牛肉と同じく法律で禁止されています。
必ず火を通さなければいけません。
豚肉を生で食べると、E型肝炎ウイルス、サルモネラ属菌やカンピロバクターに感染する可能性があります。
E型肝炎ウイルスに感染すると、急性肝炎になるリスクが上がります。
症状は黄疸、発熱、悪心、腹痛等の消化器症状が出ます。
これらの症状も十分に加熱すれば防げるので、生では食べないようにしましょう。
(参考:厚生労働省HP)
鶏肉の生食とその危険性
鶏肉の生食は法律では禁止されていません。
しかし、食中毒が起こりやすいことで知られており、注意が必要です。
個人差はありますが、感染した場合の症状が特に強いので、注意しなければなりません。
カンピロバクターは鶏肉だけでなく牛肉や豚肉などにも存在しますが、生の鶏肉での感染率が高いことで知られています。
潜伏期は1〜7日と長く、二次感染を誘発する可能性があり、病因を特定できないこともあります。
症状は発熱、頭痛、吐き気、強い腹痛、 下痢、血便等が挙げられます。
またギラン・バレー症候群(急性炎症性脱髄性多発根神経炎)という末梢神経系の炎症性脱髄性疾患を後発的に引き起こす可能性があります。
ウイルス感染やワクチン接種により感染から1~3週後に神経麻痺、呼吸困難などの症状が出る疾患です。
75℃以上、1分以上加熱することで防げるので十分加熱してから食べましょう。
疲れている時や体調の良くない時、睡眠不足の時に生の鶏刺しを食べると感染する可能性が高いので気を付けてください。
また、生肉が手に付着した際はしっかり洗いましょう。
馬肉の生食とその危険性
馬肉は唯一生食が認められている肉です。
細菌の感染リスクやアレルギー性が低いため認められています。
しかし、きちんと管理されていないと安全には食べられません。
馬肉は比較的安全性が高いと言われていますが、寄生虫の「サルコシスティス・フェアリー」によって食中毒を起こすことがあります。
事例は少ないのですが、症状として嘔吐や下痢が報告されています。
食後4~8時間で発症しますが、症状は軽度で速やかに回復します。
発症した人から人への感染は確認されていません。
疲れていたり、免疫力が下がっていると感じる時は、馬刺しの摂取は避けましょう。
(参考:農林水産省 / 食品安全に関するリスクプロファイルシート)
ジビエの生食とその危険性
シカやイノシシなど野生動物の生肉は、豚肉と同様にE型肝炎ウイルスに感染する可能性があります。
また、病原微生物、寄生虫、腸管出血性大腸菌も保有しています。
これらは十分な加熱により死滅するため、加熱処理をされているものを摂るようにしましょう。
日常で起こりうる生食による生肉の食中毒とは?
お店で安全に提供されているものでも、ご自身の体調や免疫力によって感染する可能性があります。
また、お店によりますが、十分に管理できていない可能性もあるので、きちんと判断した上で摂るようにしましょう。
生肉を実際に食べていなくても、BBQや焼肉などで生肉に触れた手が十分に洗浄されておらず、菌やウイルスを口に入れてしまう可能性があります。
対策
できる限り肉類は生で食べないよう心がけましょう。
どうしても食べたい場合は、ご自身の体調と相談しながらにしましょう。
また、生肉に触れた箸やトングを直接口に運ばないようにしましょう。
肉を調理した後はしっかりと洗剤で手を洗いましょう。
万が一NGな生肉を生食してしまった場合【食中毒の危険】
もし感染してしまった可能性があり具合が悪くなった場合は、速やかに医療機関を受診してください。
生肉を食べてしまった場合は、静菌作用の強い食べ物(梅、梅肉エキス、生姜等)を適量摂り、安静に過ごして免疫力を下げないように努めましょう。
子供や高齢者は生肉を食べて良いか
子どもや高齢者は、成人に比べて免疫力や抵抗力が低いです。
その分感染する可能性が高いので、生肉は避けるようにしてください。
生肉には食中毒の危険あり!生食する場合はしっかり対策を考えて楽しんで!
今回の記事では「生肉の危険性と生肉摂取で起こりうる症状」について、現役薬剤師が解説しました。
生肉の摂取は危険であることや対策方法が分かりましたね。
安全に食べるためにも、日頃から体調を意識して健康的に過ごしていきましょう。
▼“低温調理”の食中毒回避テクニック
低温調理は手間をかけずにお店レベルの料理ができる一方、加熱不足による食中毒のリスクもあります。今回は、食中毒菌の死滅温度や肉の低温調理に適切な加熱温度・時間など、安全に低温調理を行うために知っておきたいポイントを解説します。