北海道胆振東部地震を経験した専門家が語る「地震保険」の重要性

日本で暮らす私たちにとって、決して他人ごとではない大地震。災害への備えの1つに「地震保険」があります。地震保険は火災保険の付帯保険であることや、保険料の支払われ方がやや特殊なことをご存知でしょうか。ファイナンシャルプランナーの稲村優貴子さんがわかりやすく解説します。

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2018年9月6日午前3時過ぎ、私が暮らす北海道で大きな地震がありました。子どもでも目覚めるほどのユサユサという揺れののち、30分ほどで北海道全域が停電(ブラックアウト)しました。当たり前の生活が突然できなくなると、とても不安です。普段からしておける「備え」の1つである地震保険について改めて確認してみましょう。

地震保険は、実は付ける前提の保険

あまり知られていませんが、火災保険はもともと地震保険をつける前提のものです。火災保険の加入時に、地震保険をつけるかどうか選んで加入しない場合は「加入しないという意思表示の捺印」を火災保険の申込印とは別にする必要があります(加入時に印鑑を押す時あまり意識していないかもしれませんね……)。

補償内容は一律、保険料は地域ごとに決定

また、地震保険の制度は国と民間保険会社が合同で運営しているため、補償内容は保険会社が異なっても一律となっていますが、保険料率は都道府県ごとに異なります。ちなみに、地震が予想される地域の保険料は高く安い地域より3倍以上高くなっています。この料率を知るだけでも自分の地域がどれだけ地震のリスクが高いのか知ることができます。

火災保険に加入していても任意で選べる地震保険。もしつけいていない場合は、中途付加も可能です。あらため改めて自分の加入している火災保険に付帯しているかどうか確認してみましょう。

地震で壊れた家財道具は保険で補償される?

火災保険を契約する際に、壁やガラスは「建物」、テレビ・棚・食器などは「家財道具」としてそれぞれに保険を掛けます。しかし、地震保険をつけていないと地震が原因で受けた損害は対象外になるので注意が必要です。今回の地震でも多くの家庭の家財道具が倒れたり壊れたりといった被害を受けてしまいました。

地震保険は損害の程度ごとに4段階で支払われる

地震保険の支払われ方がも火災保険と異なることも知っておきたいポイントです。例えば、地震発生以外のタイミングで火事がおきて、家財道具1,000万円の時価相当のうち80万円相当のものが焼失したとしましょう。火事による損害であれば、火災保険に加入していれば損害額全額の80万円が支払われます。なお、ここで例に挙げた80万円相当とは、例えばテレビ・電子レンジなど電化製品30万円、タンスや食器棚・照明など家財道具40万円、食器や時計など細かい身の回り製品10万円。それらを累計して考えます。

一方、地震が原因で損害を受けた場合、火災保険のみの加入では保険金支払い対象外です。地震保険に加入していた場合は対象になりますが、下の表のような4段階で保険金が支払われることにも注意が必要です。先ほどのケースでは、1,000万円相当の家財のうち損害額が80万円ですから損害の程度は8%となります。損害の程度が10%以下の場合は支払いは発生しないため、せっかく地震保険をつけていても保険金はゼロとなってしまうのです。

建物の損害の程度は、焼失・流出の程度や損害の程度など基準が異なる

4段階の支払いとなる理由

地震は一瞬にして甚大な損害になるので、火災保険のように1件ずつ時価査定をしていては保険金支払いに相当の時間を要してしまいます。スムーズな保険金支払い処理を進めるために、損害を4段階に絞っているのです。このような仕組みのため、時価額の81%の損害であれば100%の保険金、79%の損害であれば60%の保険金支払いとなり、損害がわずか2%の差であっても、もらえる保険金に40%の開きがでてしまうことになります。地震に対する備えは、保険だけでは万全とはいえないかもしれません。家具や家電製品の固定など、日頃からの防災対策も忘れないようにしましょう。

保険加入と並行して安全への備えを

災害は突然起こります。いざというときのために建物や家財に保険をかけておくことも大切ですが、自身や家族の安全のために日頃の備えが大切だと、今回の地震を体験して強く感じました。地震で多いのが家財の倒壊によるケガで、本棚から飛び出してきた本によって亡くなるケースも。モノが倒れたり飛び出したりしてこない場所を就寝場所に選びましょう。割れた食器類で足を切ることもあるので、スリッパや靴下を枕元に置いておくと安心です。

今回の北海道地震は夜中だったので、エレベーターに閉じ込められるなどはニュースにあまりでてきませんでしたが、30時間におよぶ停電が昼間起こったらと思うとぞっとします。地震などの災害に備え、ラジオ・電池・水・食料などの備えは必ずしておきましょう。

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