お彼岸はいつ? お盆との違い、ぼたもちとおはぎの使い分けも解説

春と秋にやってくる「お彼岸」。墓参りが過ごし方として一般的ですが、正しい意味や由来はご存知ですか。また、よく迷うのが供え物として使う「ぼたもち」と「おはぎ」の違いついて。春と秋、それぞれの供え物はどう呼べば良いのでしょう。同じく先祖供養の行事であるお盆との違いも含めて、民俗情報工学研究家の井戸理恵子先生に教えてもらいます。

目次

お彼岸の由来と時期

お彼岸は日本の伝統的なしきたりの一つ。昼と夜の長さが同じ(※)になる「春分の日」と「秋分の日」を中日として、前後7日間を彼岸と呼びます。この彼岸という呼び方は、仏教に由来します。わたしたちが生活するこの世を「此岸」、亡くなった人がいくあの世を「彼岸」といいます。また、正式には春は「彼岸」、秋は「秋彼岸」と呼ばれます。

※春分の日と秋分の日は、太陽が真東からのぼり、真西に沈みます

仏教では「西方浄土」と呼ばれる極楽浄土(あの世)は西側にあり、東側には現世(この世)があるという考え方が存在します。太陽が真西に沈む春分と秋分は、あの世とこの世が最も近くなりつながる日と考えられ、ご先祖様を供養する日となりました。このように、お彼岸は仏教信仰とともに結びついて、民間信仰となったのです。

お彼岸には、のちに説明をしますが墓参りをすることが前提としてあります。その上で、家で仏壇に供え物(供養膳やぼたもち・おはぎなど)をして供養するのが一般的です。あの世へいった方がのどが渇いたり、お腹が空かないようにと、水や食べ物を供えるのです。

また「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、お彼岸は季節の変わり目とも考えられているようです。

お彼岸の行事食

仏壇やお墓に供えるものとして、前述のぼたもちやおはぎ以外に、いなりずし、のり巻きなどを備える地域もあります。故人の好物などを供え、私たちもこれらのメニューをいただき、供養するとよいでしょう。

「ぼたもち」と「おはぎ」の違いは?

お彼岸に備えるもち米を小豆で包んだ供え物は、春と秋でそれぞれ「ぼたもち」「おはぎ」と呼び方が異なります。ぼたもちは牡丹の花が咲く春のお彼岸、おはぎは萩の花が咲く秋のお彼岸の呼び方です。また、これらは材料は同じですが、作り方が多少異なります。

小豆は秋に育ち収穫されますが、ぼたもちは収穫から時間が経ち、固くなった小豆を使うのでこしあんに、おはぎは収穫してから間もない頃の柔らかい小豆を使うのでつぶあんにします。ちなみに、赤は魔物が嫌う色とされ、小豆の赤さで魔物を祓うために食べられるようになったと言われています。

▼おはぎとぼた餅の違いは?
あんこでお餅を包んだ「おはぎ」と「ぼた餅」。見た目も材料も同じなのに、名前が違うのはどうしてなのでしょうか?おはぎとぼた餅の名前の由来や、お彼岸に食べる理由を民俗情報工学研究家の井戸理恵子先生に解説してもらいました。

「おはぎ」「ぼたもち」の違いは季節にあり!こしあん・粒あんはどう違う?

お彼岸の時期に食べる「ぼたもち」や「おはぎ」。どちらも、あんこでお餅を包んだ和菓子ですが、なぜ2つの呼び方があるのかご存じですか?名前の由来やお彼岸に食べる理由について解説とともに、最後はおいしいレシピも紹介します。

お盆との違いは?

お彼岸とお盆はどちらも同じ先祖供養のための行事ですが、お盆があの世からこの世にご先祖様が帰ってくる日なのに対し、お彼岸はあの世とこの世がつながるもののご先祖さまは向こうから来られません。そのため、お盆が家で親族などと先祖供養をするのに対し、お彼岸はこの世にいる私たちが墓参りに出向き、先祖供養をします。花火をしたり迎え火を焚きご先祖様を家に招き入れたりするなど、お祭りの色が濃いお盆に対し、お彼岸はあくまでも故人を偲ぶ行事。静かに墓参りや仏壇に手を合わせて供養しましょう。

お彼岸のNG事項

お彼岸は、家族が揃って先祖供養をする行事です。この時期に故人に線香をあげたい場合でも、親族以外は故人の自宅に伺うのは避けましょう。墓参りであれば問題ありません。

墓参りのマナー

持ち物

仏花、線香、マッチ(ライター)、供え物など。墓を掃除する際に使うほうきやちりとり、雑巾、水桶、ひしゃくなども持って行った方が良いですが、墓地などで貸し出しているケースもあるので確認しましょう。

墓参りの流れ

墓に到着したら、墓をきれいに清掃してから仏花を花立に入れ、水鉢の水もきれいなものに入れ替えます。供え物を備えたら線香に火をつけ、線香立てに入れて手を合わせてお祈りします。この時、立ったままお祈りするのは先祖を見下ろす形となり失礼になるので、墓の前ではかがんでお祈りするようにしましょう。供え物は、墓地によっては持ち帰るなどのルールが決まっているので、確認するようにしてください。

お彼岸はご先祖様がいるあの世との距離が近くなる時期。ご先祖様が好きだったものなどをお墓参りに持参し、供養しましょう。

監修: 井戸理恵子

今回話を聞いた先生

井戸理恵子(いどりえこ)

ゆきすきのくに代表、民俗情報工学研究家。1964年北海道北見市生まれ。國學院大學卒業後、株式会社リクルートフロムエーを経て現職。現在、多摩美術大学の非常勤講師として教鞭を執る傍ら、日本全国をまわって、先人の受け継いできた各地に残る伝統儀礼、風習、歌謡、信仰、地域特有の祭り、習慣、伝統技術などについて民俗学的な視点から、その意味と本質を読み解き、現代に活かすことを目的とする活動を精力的に続けている。「OrganicCafeゆきすきのくに」も運営。坐禅や行事の歴史を知る会など、日本の文化にまつわるイベントも不定期開催。

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