お食い初めの由来と正式な方法--準備物や献立、歯固めの石を解説

赤ちゃんが生まれてから100日後に行う「お食い初め」。由来や意図、準備するものなどを確かめたうえで、慌てることなく当日に臨みたいですね。民俗情報工学研究家の井戸理恵子先生がお食い初めを解説します。

目次

お食い初めとは?

なぜ行うの?

お食い初めは、子どもの生後100日頃に、祝い膳を用意して赤ちゃんに食べさせるマネをする行事です。これは今後、さらにいろいろな食べ物を食していくことを、赤ちゃんに意識づけさせるための模倣行為としての儀式だといいます。また「歯がちゃんと生えるように」「歯が固くなるように」という思いを込めて行われることから「歯固め」の儀式とも呼ばれます。さらには、「丈夫な子に育つように」「一生食べ物に困らないように」「100日生きたお祝いとこれからも長生きするように」などの意味も込められています。

この行事自体は、平安時代に中国から伝わり、宮廷儀式として定着したものが次第に民間にも広まって定着したと言われています。ただし、お食い初めの中で石を用いる(※後述)などは日本独自の文化だといいます。

時期は?

上述の通りお食い初めは、生後100日~120日で催すのが一般的です。特に決まっている日取りは無く、地域によって異なったり、祖父母や両親の都合などで調整したりします。ちなみに、お食い初めは100日を目途にしていることから、「百日(ももか)節句」「百日祝い」とも呼ばれます。

参加者は?

両家の祖父母と、両親、それに主役の赤ちゃんで行うのが基本です。赤ちゃんに食事を食べさせるマネをする役割は、かつては親族の長老のものでしたが、最近は祖父母や両親など、赤ちゃんが安心してお祝いの席を楽しめる相手であれば、特に指定はないようです。

用意するもの

食事

一汁三菜が基本です。茶碗に高く盛ったごはんに吸い物、お頭付きの鯛の焼き物、煮物や和え物、梅干しなどの香の物、そして小石(※後述)を3つ用意します。小石は香の物と一緒の食器に盛り付けます。ごはんは赤飯もしくは白ごはんがベターです。汁物は「吸う力がつくように」という思いを込め、お吸い物を用意するようにしましょう。焼き物は「めでたい」という意味を込め、鯛を使うのが良いでしょう。

小石は、「歯固め用の石」として他のメニューと一緒に祝い膳にのせます。この石は神社で配っている地域もありますが、配っていない場合は産土様(うぶすなさま / 生まれた場所の神様)や氏神様(うじがみさま / 住んでいる場所の神様)がいる神社で、丸みのある石を拾い、洗ったのちに煮沸消毒をして使用しましょう。

祝い膳への並べ方ですが、左下にごはん、右下に吸い物、左上に煮物や和え物、右上に焼き物、中央に香の物をのせましょう。

なお、使い終わった石はいただいてきた神社へ返却するようにしましょう。その際、可能であればお祓いをしてもらった方が良いので、神社に相談してみてください。なお神社より配られた石は、返却時期について特に指定が無い場合や、七五三の際に持参する場合などがあります。

食器、道具

お食い初めをするにあたり、膳や椀、箸は新調するようにしましょう。伝統的なお食い初めの食器は、子どもが男の子の場合は中も外も赤(朱)い漆器を、女の子の場合は外が黒で中が赤(朱)い漆器を使います。この色や男女の違いは、赤(朱)色が魔除け効果が高く、毒に対する抵抗力がある色だと考えられていたことに由来しています。かつて、女の子より男の子の方が命を落としやすかったことから、より魔除け効果の高い内外ともに赤(朱)色の食器を男の子に使うようになったそうです。

箸は柳の木で作られた柳箸を使用します。おめでたい行事なので、万が一にでも箸が折れると縁起が良くありません。柳の木はしなやかで折れにくく、また魔除けの効果があるとも言われている強い木のため、使用するのだといいます。なおこの柳箸は、お祝いの時に使用することから「祝箸」と呼んだり、先が細く真ん中が膨らんでいる様子から「俵橋」とも呼んだりします。箸の片方は子どもが食べる口、もう片方は神様が食べる口なので、両方を使用することは避けましょう。一般的な祝箸の長さである八寸(24cm)のものを使うようにしてください。

ただし、最近では長く使える子ども用の食器などで揃えるのも一般的になってきました。伝統的な形式を取り入れつつ、楽しくお食い初めが開催でき、その後も使える道具を揃えても良いですね。

食べる時の順序

生後100日頃の赤ちゃんなので、実際には用意した食事は食べられません。食べさせるふりをしながら参加者みんなで楽しみましょう。食べ方としては、吸い物や焼き物などの各食事を食べるごとに、間にごはんをはさむようにします(例: ごはん→吸い物→ごはん→焼き物)。祝い膳にある全てのメニューを、ごはんを間に入れながらひと通り食べる行為を3回繰り返し、最後に箸先を小石にちょんちょんと数回あて、その箸先を赤ちゃんの歯ぐきにも数回あてる「歯固めの儀式」をして完了です。この歯固めの儀式は、丈夫な歯が生えてくるようにという意図が込められています。

大切な子どもが、すくすくと丈夫に育つようにという祈りを込めたお食い初めの行事。家族で楽しみながら執り行ってくださいね。

監修: 井戸理恵子

今回お話を聞いた先生

井戸理恵子(いどりえこ)

ゆきすきのくに代表、民俗情報工学研究家。1964年北海道北見市生まれ。國學院大學卒業後、株式会社リクルートフロムエーを経て現職。現在、多摩美術大学の非常勤講師として教鞭を執る傍ら、日本全国をまわって、先人の受け継いできた各地に残る伝統儀礼、風習、歌謡、信仰、地域特有の祭り、習慣、伝統技術などについて民俗学的な視点から、その意味と本質を読み解き、現代に活かすことを目的とする活動を精力的に続けている。「OrganicCafeゆきすきのくに」も運営。坐禅や行事の歴史を知る会など、日本の文化にまつわるイベントも不定期開催。

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