目次
完全栄養食品「卵」の栄養素を完全解説!1日にいくつまでなら食べてもいい?
その栄養の豊富さから「完全栄養食品」ともいわれている卵。実際にはどんな栄養素が含まれているかご存知ですか?体づくりや美容にも欠かせない、そんな卵の栄養素とその効果について解説します。
卵1個に含まれる栄養価
卵は食物繊維とビタミンC以外の栄養素を全て含んでおり、その栄養価の高さから「完全栄養食品」と呼ばれるほど理想的な食品です。
栄養成分に着目すると炭水化物はあまり含まれていませんが、たんぱく質や脂質をほどよく含み、さらにビタミンやミネラルを豊富なのが特徴です。
なお、卵黄と卵白では含まれている栄養素も異なります。今回は卵黄と卵白に分け、それぞれどのような栄養素が含まれているのか解説します。
卵黄に含まれる栄養素
卵黄1つあたり20gとすると、含まれている主な栄養成分は次のとおり。
・たんぱく質:3.3g
・脂質:6.9g
・ビタミンA:140μg
・ビタミンB2:0.09mg
・ビタミンB6:0.06mg
・ビタミンB12:0.7μg
・ビタミンD:2.4μg
・ビタミンE:0.9mg
・カルシウム:28mg
・マグネシウム:2mg
・リン:110mg
・鉄:1.0mg
・亜鉛:0.7mg
・葉酸:30μg
脂質
卵の脂質はほとんどが卵黄に含まれていますが、その中にはオレイン酸といわれる脂肪酸が含まれており、悪玉コレステロールを下げる働きがあるといわれています。
ビタミン
卵黄にはビタミンAやビタミンDが特に含まれています。
ビタミンAは皮膚や粘膜の健康維持に働く栄養素。
卵黄1つ(20g)で30~64歳の男性の1日に必要なビタミンAの約21.5%、女性の場合は約28%が含まれています。
またカルシウムの吸収をサポートし、骨を強くする働きのあるビタミンDは、成人の1日に必要な量の約28.2%が卵黄1つに含まれています。
ミネラル
卵黄には鉄と亜鉛が多く含まれています。
鉄は赤血球を作る上で必要となる栄養素で特に女性は不足しがちなので積極的に摂取しておきたいところです。
卵黄1つ(20g)に対して、鉄の含有量は約1.0mg。これは、30歳男性において1日に必要な量の約15.4%、女性の場合は11.1%にあたります。
亜鉛はたんぱく質の再合成やDNAの合成に必要な栄養素で、不足すると味覚障害をおこす可能性がある栄養素です。
卵黄1つ(20g)には、30代男性が1日に必要な量の約7.8%、女性の場合は10%が含まれています。これらの他にも様々な栄養素が含まれており、卵黄はかなり栄養価が高いことがわかります。
卵白に含まれる栄養素
卵白1個(30g)あたりに含まれている栄養成分は次のとおり。
・たんぱく質:3.0g
・脂質:微量
・ビタミンA:0μg
・ビタミンB2:0.11mg
・ビタミンB6:0mg
・ビタミンB12:微量
・ビタミンD:0μg
・ビタミンE:0mg
・カリウム:42mg
・カルシウム:2mg
・マグネシウム:3mg
・リン:3mg
・鉄:微量
・亜鉛:0mg
・葉酸:0μg
卵白には主にたんぱく質やカリウムなどが含まれています。
卵黄との大きな違いは脂質が含まれていないこと。そのため卵黄に比べるとカロリーも低くなります。
たんぱく質
卵白1個分(30g)に含まれるたんぱく質は3.0g。
卵黄にも含まれているので、卵1個を食べると成人男性の1日に必要なたんぱく質の約13%を摂取することができます。
カリウム
カリウムは細胞の浸透圧を調整したり、筋肉の収縮に関わる栄養素です。
利尿作用があり、ナトリウム(塩分)を身体の外に排出することでむくみの軽減や血圧低下が期待できます。
卵白には、卵白1個分で42mgのカリウムを摂取することができます。
これは、成人男性が1日の摂取目安量の約1.7%、成人女性の場合は約2%です。
全卵の栄養素
卵黄(20g)と卵白(30g)の栄養素(全卵50g)をまとめると次のとおり。
冒頭で解説したとおり、卵にはビタミンCと食物繊維以外の栄養素が含まれており、この図からも私たちに必要な栄養素が満遍なく摂取できることがわかりますね。
卵は優秀なたんぱく質源!
卵はたんぱく質の多い食品ですが、その中でも特に「良質なたんぱく質」を含んでいる食品といえます。
食品に含まれるたんぱく質の栄養価は、必須アミノ酸と呼ばれる9種類のアミノ酸の含有量によって決まります。この含有量を摂取するのに必要な量と比較して算出した値を「アミノ酸スコア」と呼んでいます。
アミノ酸スコアは満点が100であり、不足している必須アミノ酸があると、そのスコアは下がっていきます。
気になる卵のアミノ酸スコアは……なんと100点満点!
肉や牛乳と同じくらい良質なたんぱく質であることが分かっています。卵は手軽に摂取できる優秀なたんぱく質源なのですね。
食べ方で栄養価が変わる?
卵はさまざまな栄養素が含まれる、栄養価の高い食品であることがわかりました。実際、卵を食べる際は、生で食べるだけではなく、茹でて食べることもありますよね。食べ方によって栄養価は変わってしまうのでしょうか?
生卵の栄養価
卵を生で食べる場合、前述したとおり、食物繊維やビタミンC以外の栄養素をあますことなく摂取することができます。
また、カラザ(卵黄についている白い紐状のもの)や卵黄膜に含まれているシアル酸はウイルスなどによる感染を防ぎ、免疫力を高める働きがあるという報告も。生で食べる時は取り除きがちですが、一緒に食べればシアル酸の摂取もできますよ。
茹で卵の栄養価
茹で卵は生卵と比べてほとんど栄養素は変わりません。
わずかに起きている変化としてはビタミンAやDなどは多少減少し、ビオチンが微量に増加している程度。
ビオチンは、ビタミンB群のひとつで、エネルギー代謝に関与していたり、炎症を抑える働きが期待できる栄養素。熱や酸に強いのも特徴のひとつです。
実は、このビオチンを阻害する働きのある「アビジン」という成分が生の卵白に含まれています。アビジンは加熱することで働かなくなるので、茹で卵にして食べれば、よりビオチンを効率よく摂取することにつながります。茹で卵だけではなく、目玉焼きにも同様のことがいえます。
卵の効果効能
卵に含まれている栄養素には、どのような働きが期待できるのでしょうか?ひとつずつ見ていきましょう。
タンパク質で疲労回復&痩せやすい体質に
たんぱく質は、私たちの髪や爪、皮膚、筋肉を作る材料となっており、不足すると肌がボロボロになったり、筋肉量が落ちる原因になります。
たんぱく質をしっかりと摂取することで、筋肉量を増加・維持します。筋肉がしっかりついた身体は、代謝が上がり、痩せやすく太りにくい身体をつくることにつながります。
体力もつくので、疲労回復にもなりますよ。
老化予防・美容効果
卵には、抗酸化作用を持つビタミンAやEが含まれています。活性酸素の発生を抑えることで、細胞の老化を抑える働きが期待できます。
また、肌作りに必要なたんぱく質はもちろん、コラーゲンを増やす働きのある成分が卵には含まれています。そのため皮膚の弾力や肌のうるおいを保つ効果が期待できます。
▼卵には生理中の頭痛や肌荒れを和らげる効果も
ビタミンB群の不足は肌荒れを起こしやすくします。生理中の肌荒れが気になるときは、卵やレバーなどのビタミンB群が豊富な食べ物をあわせて摂りましょう。
卵にまつわるいろんな噂は本当?
卵は、食べ過ぎないほうが良い、1日1個までならOKなどさまざまな噂がありますが、実際はどうなのでしょうか?栄養学の観点から解説していきます。
コレステロールが多い人は卵を食べない方がいい?
コレステロールが高い人は卵は食べないほうが良いという話を聞いたことがある方、いらっしゃるのではないでしょうか?
実際、卵にはコレステロールが含まれています。その量は、卵1個(可食部50g)あたり、190mg。
コレステロール値が高い人、いわゆる脂質異常症の方は、重症化予防の観点からコレステロール摂取量を1日200mg未満にするのが望ましいとされています。
卵以外にもコレステロールが含まれている食品はあるので、気になる方は卵は少なくとも1日おき程度に食べる頻度を落としたほうが良いでしょう。
1日に食べていい量は?
健康な方が、卵を1日1個食べる程度であれば問題ありません。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、脂質異常症などがない場合、コレステロールの摂取量の目安は決められていません。また、コレステロールは身体の中で合成されており、摂取量が多くなると合成量が少なくなるなど調節するようになっています。
しかし、いくら調節ができるからといっても、食べ過ぎはよくありません。
卵はコレステロールだけではなく、たんぱく質や脂質などを含む食品です。食べ過ぎによりカロリー過多になったり、脂質の過剰摂取により、血中コレステロールが高くなることもあります。
目安としては1日1個程度にしておくのが分かりやすくて良いでしょう。もし、1日に2~3個卵を食べたら、卵を食べるのを2~3日お休みして調整してください。
生の卵白を食べるとハゲる?
生の卵白を食べるとハゲるという噂を聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
その理由は、卵白に含まれる「アビジン」が関係しています。
皮膚や爪、髪の健康にはビオチンという物質が関与しているのですが、卵白に含まれるアビジンと結合することで、ビオチンが吸収できなくなります。
これによってビオチンの欠乏症を引き起こし、脱毛などの症状があらわれるというものです。
実際、ビオチンが欠乏することで、脱毛が見られることがあります。
しかしビオチンは肉など、さまざまな食品に含まれているだけでなく腸内で細菌が合成されるため、欠乏することはほぼありません。
卵白を長期間大量に摂取しない限り、欠乏症が起こるとは考えにくいでしょう。(※)
栄養いっぱいの卵を食事に取り入れよう
栄養面でかなり優れている卵。日常的に取り入れやすい食品なので、食べ過ぎに気をつけながら摂取できるといいですね。生でも加熱でも美味しいので、ぜひ自分の好みの食べ方を見つけて卵を存分に楽しんでみてください。
参考文献
・日本食品標準成分表2020年版(八訂)(文部科学省)
・日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省)
・鶏卵の科学とその応用(化学と生物 Vol.35,No.4,1997)